おはようございます。
奈良北西部、雨の朝になりました。
平成30年5月31日 朝日新聞 朝刊 論壇時評です。
彼の問いかけを記事の中から抜き出してみます。
国際世界観光機関(UNWTO)の統計では、2000年から2017年に世界の国
際観光客到着数は2倍に増えた(中略)、今や観光は日本第5位の産業だが、
(中略)「観光公害」が出ているという声もある。
なぜ、これほど急に増えたのか。(中略) 観光客からみれば、
日本は「安くておいしい国」になったのだ。
ここ20年で、世界の物価は上がった。(中略) 香港やバンコクでもラン
チが千円が当然になりつつある。だが、東京ではその3分の1で牛丼が食
べられる。それでも味はおいしく、店はきれいでサービスはよい。
ホテルなども同様だ。(中略) 1990年代の日本は観光客にとって物価の高
い国だったが、今では「安くておいしい国」なのだ。(中略)
400%以上伸びたのは、日本・インド・ハンガリーの3つだ。(中略)
このことは、日本人の1人当たりGDPが95年の世界3位から17年の25位
まで落ちたことと関連している。「安くておいしい店」先客万来で忙しい
だろうが、利益や賃金はあまり上がらない。観光客や消費者には天国かもしれないが、労働者にとっては地獄だろう。(中略)
「日本には、20代、30代で高度な知識・能力を有する若者が、高賃金で働く職場が少ない。稼げないから、食べ物も安くなるのだろう」。(中略)
米国で経営学修士をとって起業した若者のこんな声を紹介する。
「日本に帰る理由を考えたけど、一つもなかった。強いて考えれば、そこそこおいしいご飯がタダ同然で食べれることかな。アメリカだと、日本の何倍もするからね」
平成30年5月31日 朝日新聞朝刊 論壇時評より
観光客や海外で生活する人たちから見た日本の現状が的確に語られています。
いっぽう留学生も増えていますね。
日本は非英語圏で、日本語習得は難しい。それでも留学生が集まるのは
『働ける国』だからだ。(中略)
外国人で就労ビザを持つ人は18%、残りは技能実修生、留学生、日系人などだ。
受け入れ方が不透明でなので人権侵害も数多い。こうした外国人が、
コンビニや配送、建設、農業など、低賃金で日本人が働きたがらない業種を支えている。(中略)
外国人のあり方は、日本社会の鏡である。外国人観光客が喜ぶ「安くておいしい日本」は、労働者には過酷な国だ。そしてその最底辺は、外国人によって支えられているのである。
平成30年5月31日 朝日新聞朝刊 論壇時評より
小熊英二の問いかけの核心はここからです。
私は、もう、「安くておいしい日本」はやめるべきだと思う。
客数ばかり増やすより、良いサービスには適正価格をつけた方が、観光業はもっと成長できる。牛丼も千円で売り、最低賃金は自給1500円以上に
するべきだ。「そんな高い賃金を払ったら日本の農業や物流や介護がつぶれる」というなら、国民合意で税金から価格補助するか、消費者にそれなりの対価を払ってもらうべきだ。そうしないと、低賃金や長時間労働で、
「安くて良質な」サービスを提供させるブラック企業の問題も、外国人の人権も解決しない。デフレからの脱却もできないし、出生率も上がらないだろう。
日本の人々は、良いサービスを安く提供する労働に耐えながら、そのストレスを、安くて良いサービスを消費することで晴らしてきた。そんな生き方は、もう世界から取り残されている。
平成30年5月31日 朝日新聞朝刊 論壇時評
彼の問題提起は示唆に富んでいます。
人口減少社会でどのような社会を生み出すのか?
過大先進国として、前例のない社会実験を日本は経験することになります。
この考え方に、今の日本で既得権を持っている人たちは当然反対するでしょう。
しかし、現在日本の舵取りをしている為政者達、官僚、経済界などが
現在のこの難局を乗り切る叡智を持っているとは思えません。
今の嘘をつき、言い訳をしている言動をみれば、自明でしょう。
私は、生活者の視点から人口減少社会の生き方の再検証をすることが必要だと
思っているので、小熊英二の問題提起から多くのヒントを貰いました。
私の価値観を押し付ける気持ちはありません。
人口減小社会の未来学の意見の一つとしていただければと思います。
では・・・
楽しい一日をお過ごしください。