昨日は神戸のモザイクで今年初めての忘年会、
ブラジル料理を楽しんできました。
帰りの電車で読んでいたのがこの本です。
塩野七生『海の都の物語 ヴェネツィア共和国の一千年』 新潮文庫
私はこの本がお気に入りです。
読むのは今回で3回目。
資源を持たない小海洋国家が、697年に元首を住民投票で選んでから
1797年に滅亡するまでを楽しみながら読ませてくれます。
1巻
第一話 ヴェネツィア誕生
第二話 海へ!
第三話 第四次十字軍
2巻
第四話 ヴェニスの商人
第五話 政治の技術
3巻
第六話 ライヴァル、ジェノヴァ
第七話 ヴェネツィアの女
4巻
第八話 宿敵トルコ
第九話 聖地巡礼パック旅行
5巻
第十話 大航海時代の挑戦
第十一話 二大帝国の谷間で
6巻
第十二話 地中海最後の砦
第十三話 ヴィヴァルディの世紀
第十四話 ヴェネツィアの死
エピローグ
1巻では、自由と独立を守るため、外交、貿易、軍事力を駆使し、共同体の利益を徹底
して追及するリアリスト集団としてのヴェネツィア共和国の誕生を描いています。
2巻では東地中海の定期航路を確立し、海洋貿易国家としての地位を固め「ヴェネ
ツィア株式会社」として、独自の経済技術・情報を用い、東方交易市場で強い影響力を
示し、宗教の排除とプロの政治家による政治の安定化の実態を描いています。
第3巻は最大のライバル個人主義・天才型貿易の海洋国家ジェノヴァとの
ライバル争いとヴェネツィアの女
(このあたりが塩野七生ならでは)を描いています。
第4巻では1453年トルコ帝国がビザンチン帝国を滅ぼし、強大な軍事力を背景に更に
西に勢力を伸ばそうとします。
ヴェネツィアがこの強敵とどのようにして渡り合い、その一方
新興ビジネスとしての聖地地巡礼パック旅行を生み出したか教えてくれます。
5巻ではポルトガル・スペインという2大国家の抬頭の中で海洋都市国家から領土型封
建国家への歴史の転換期を迎えるヴェネツィアの姿を描いています。
最終巻ではトルコ帝国との抗争で交易拠点を失い、海上交易市場もイギリス・オランダ
に主導権を奪われ、衰退の道を歩み始めます。
そして、ナポレオンにより「地中海の女王」と呼ばれたヴェネツィア共和国は
その歴史を閉じることになります。
この本の中には示唆に富む言葉がちりばめられています。
いくつか例を挙げてみましょう。
塩野七生の描いた「現実主義者」とはこのような人を言います。
現実主義者とは、現実と妥協することではなく、現実と闘うことによって
それを切り開く生き方を意味していたからである。
1巻 p144
ヴェネツィアほど、中小の商人の保護育成に細心の配慮をした国はない。
大企業による独占が、結局は国全体の経済の硬化につながり、それを防止
するうえで最も効力あるのが、中小企業の健全な活動であることを知って
いたのである。これを知り、実際に行ったのが、政府をにぎっていた大商
人たちであったのが面白い。 2巻 p65
本質を言い当てていますね。
大企業・大商人を政権与党、中小の商人を野党という言葉に置き換えると、健全な
政治の在り方の指針にもなります。
耳の痛い大企業の経営者や政治家がおられるのではないでしょうか・・・
最近「部族化する社会」と指摘した作家がいます。
残念な言葉ですね。
今一度、他者や社会に対する「寛容」を心がけたいと思います。
眠くなってきました。
みなさん、おやすみなさい。