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奈良県在住。日々のログとして書くことにします。

『山桜』 藤沢周平の世界ですね。・・

4月4日 奈良北西部はおだやかな一日で、桜も咲きはじめました。

 

桜といえば染井吉野でしょうが、今日の主役は『山桜』です。

 

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この映画の原作は藤沢周平 『時雨みち』 新潮文庫 1984

 

の中に収められている20ページばかりの短編です。

 

パンフを開くと・・・・・・・・

 

  幸せへのまわり道

 

       風雪に耐えて咲く山桜の下

 

           男はひたむきに正義を貫き

 

        女は熱い想いを胸に秘めた。

 

  と書かれてあります。

 

主人公野江を田中麗奈、弥一郎を東山紀之が演じ、2008年5月に公開されました。

 

 

江戸時代、北の国海坂藩で野江は二度の不幸な結婚生活に耐えていました。

 

 

春先久しぶりに実家を訪れた野江は可憐な一本の山桜に出会います。

 

 

その美しさに手を伸ばしてみますが、枝は思ったより高く、花には届きません。

 

 

そんな野江の後ろから男の声が響きます。

 

 

「手折ってしんぜよう」

 

 

手折った枝を差し出す武士は手塚弥一郎と名乗ります。

 

 

それは彼女が嫁ぐ前に縁談を申し込まれた相手でした。

 

 

密かに見初めてくれていたとのことでしたが、母一人子一人の家と聞いて

 

 

縁談を断ってしまった相手なのです。

 

 

弥一郎が静かに口を開きます。

 

 

「今は、お幸せでござろうな」

 

 

思いがけない言葉に、今の境遇を隠し野江は「・・・はい」とだけ答えます。

 

 

「さようか。案じておったが、それは何より」笑って弥一郎は立ち去ります。

 

 

山桜に引き寄せられたような偶然の出会いでした。

 

 

ーどこかで自分のことをずっと気遣ってくれている人がいるー

 

 

野江の心にぬくもりが広がりつらい嫁ぎ先の日々を健気に乗り切ってゆくのでした。

 

 

 

 

手塚弥一郎が藩の重臣で不正を働く武士を斬ったのはその半年後のことでした。

 

 

弥一郎の所業を侮蔑した二度目の夫に野江は思わず夫の羽織を打ち捨てます。

 

 

そのことがもとで嫁ぎ先から離縁を申し渡され実家に戻るのです。

 

 

獄中で沙汰を待つ弥一郎。

 

 

長く厳しい冬の間、野江は獄中の弥一郎の身を案じてひたすら祈り続けます。

 

 

 

 

海坂の地におだやかな春が訪れます。

 

 

野江は一年ぶりに山桜の下に立ち、手折った枝を手に弥一郎の屋敷を訪れます。

 

 

おとずれる人もない屋敷で一人息子の帰りを待ち続ける弥一郎の母。

 

 

「おや、きれいな桜ですこと・・・・・・・」

 

 

弥一郎の母は息子が想いを寄せた女性を寛容な心と笑顔で迎え入れます。

 

 

予想もしなかった言葉が野江を包み込み、冷え切った心を温かく溶かしてゆきます。

 

「とり返しのつかない回り道をしたことが、はっきりとわかっていた。こ

 

こが私の来る家だったのだ。この家が、そうだったのだ。なぜもっと早く

 

気がつかなかったのだろう」(小説 山桜より)

 

 

 

武家社会の主流ではない、傍流の男たちが、しがらみの中で人間らしく生きよう

 

 

とする姿を藤沢周平は描きます。

 

弥一郎が貫こうとした『義』 

 

野江は嫁という女性の立場から『義』を通した。

 

だからこそ野江は、弥一郎が命がけで貫いた『義』の部分

 

を心から愛せたんじゃないか(以下略)

 

 ”パンプ プロダクションノートから 抜粋”

 

 

 

桜にまつわるこのような短編小説・邦画もいいなと思いますね。

 

 

では、楽しい夜をお過ごしください。・・・