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奈良県在住。日々のログとして書くことにします。

『月とマーニ』  自分だけの”ひとつだけ”ってなんでしょう?

奈良北西部も梅雨入りしました。

 

今日、2012年に上映された「しあわせのパン」をビデオで観ました。

 

 

映画『しあわせのパン』公式サイト

イントロダクション | 映画『しあわせのパン』公式サイト

 

この映画のキーワードは「分け合う」ということ。

 

パンはその行為を視覚的に表現できるアイテムとして使われています。

 

内容は・・・・

 

北海道の湖のほとりにあるパンカフェからとどいた物語で、月浦の四季を背景に、それ

 

ぞれの生活の中で、ちょっと心が欠けている人々が、この風景の中でオーベルジュ式の

 

パンカフェを営む夫婦(りえさんと水縞くん)のやさしい心配りと、パンを使った暖かい

 

食事でその人たちの心を、お月さまのように満たしてゆく物語です。

 

しかし、もう一つ秘密がこの映画には秘密が隠されているのです。

 

解くカギはこの絵本です。

 

 

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とても短いお話しなので、引用します。

 

『月とマーニ』

少年マーニは、自転車のかごに月を載せて、いつも東の空から西の空へと走ってゆきます。

 

太陽を乗せた少女ソルがやってくるとマーニは少しおやすみします。

  

ある日 マーニが歌いながら自転車を走らせているとやせ細った月が言うのです。

「ねえマーニ、太陽をとって。

 

一緒にお空にいると とってもまぶしくって。」

 

「だめだよ、太陽をとったら困っちゃうよ。」

 

「誰が?」

 

「僕だよ。」

 

「どうして?」マーニはきっぱり言いました。

 

「だって太陽をとったら君がいなくなっちゃうから。」

 

そしてこう続けました。

 

「そしたら夜に道を歩く人が迷っちゃうじゃないか。」

 

「大切なのは 君が照らされていて 君が照らしているということなんだ

よ。」

 

そしてそれからずっと

いまでも月とマーニは自転車に乗って毎日夜空を

渡っています。

 

みしまゆきこ さく

ふじしまたえ え 

ポプラ文庫 2011年 本の末尾に収録

 

 

 

   実は、りえさんと水縞くんはまだ夫婦ではないのです。

   共同生活者ってとこでしょうか・・・・・・

 

りえさんは、ずっと大切に思っていることをちゃんと大切にして生きていたかった。

 

でも、そのうち大切なものがわからなくなってしまったのです。

 

そのとき、水縞くんと出会うのです。

 

「月浦で暮らそう。」数回しかあったことのない水縞くんの誘いに乗って北海道で暮ら

 

すことに・・・・・・・

 

りささんは、出会ったひとたちとの日々の中で、心が欠けている人々の暮ら

 

しに自分の生活を重ね合わせてゆきます。

 

そう、りえさんにとっての≪マーニ≫を見つける日々。

 

さて、りえさんが≪私のマーニ≫をみつけられるのでしょうか?

 

あたたかく見守る水縞くん。・・・

 

月浦で過ごす四季の中で、りささんと水縞くんとの”わけあうたびに わかりあえる

 

営み日々が積み重ねられてゆきます。

 

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この本の最後の章はりえさんを大切に思う水縞くんの日記が納められています。

 

”カラマツのように君を愛す。”という章です。

 

日付にはさまざまな月が登場します。

 

夕月夜 小望月 二十三夜 二十六夜 朔月 二日月 立待月 十四夜 新月の日

居待月 十六夜 弓張月 夕月 有明月 宵月 晦日月 十五夜 十三夜

 

それぞれが、少し欠けた月ではないのでしょうか?

 

 

その月を背景に水縞くんのりえさんを想う気持ちが書き綴られます。

 

 

出だしはこんな感じ・・・

 

「想うということは苦しみです。」前掲書152p

 

すこし立つと・・・

 

「カラマツの木は、どんな土地にも根付きやすいので「先駆樹」といわれ山に最初に植える木ですが、環境が整うと他の樹木にとってかわられて姿を消す木だそうです。」前掲書168p

 

りえさんの心に根付きたい彼の心がわかるし、りえさんにまだ受け入れてもらえない自分に対する切ない思いが交錯していることをカラマツで表現しています。

 

 

水縞くんのさりげない思いやりがりえさんの三日月のように欠けた心を満たし始めます。

 

 

「背伸びもせず、萎縮もせず、自分の信じたものを作り続けてゆきたい。」

夜中にりえさんが僕に言いに来ました。 前掲書 189p

 

 

 「史生さんとアヤさん、ずっと二人で一緒に、みんなにあったかいお風呂を作ってきたんだね。私たちも二人から、いっぱいもらったね。」

中略

りえさんが初めて「私たち」と言ってくれたことをきちんとここに記しておきたい

と思います。 前掲書 195p

 

「私たち」

 

こう表現した三島有紀子の感性に脱帽しました。

 

 

そして・・・ついにやってきます。

 

 

「ずっと、ずっと見てて。私のこと」

 

「水縞くんのことも見てるから」 前掲書 196p

 

中略・・

 

「水縞くん、見つけたよ」「見つけた。私の≪マーニ≫」前掲書197p

 

 

日記の最後を水縞くんはこう締めくくります。

 

「カラマツでいいのです。それこそボクがこの世に生まれてきた役割であり、道なのだ

と思いまえます。十三夜に曇りなし 水縞尚」前掲書203p

 

 

 

 

監督三島有紀子が伝えたかったこと。

 

「自分にとって大切なものはひとつだけでいい。それを大切にしていきていけばいい」

北海道の月浦の美しい景色を背景に、彼女はこれを伝えたかったのだと思いました。

このメッセージは「繕い裁つ人」でも変奏曲として、三島有紀子の映像の中に流れていると思います。

 

これからも、三島有紀子の映像を楽しみたいと思います。

 

『私のマーニ』『自分だけのひとつだけ』見つけたいですね。

 

では、楽しい日曜の夜をお過ごしください!